マリー

 知美は今朝きいた会話を思い出し、身を縮こまらせた。

「俺の母親が言っていたから、間違いないと思う」

「保健室で寝ていたら、首を絞められたのよ。茶髪の女に」

 彼女は知美を鋭い視線で捉える。

「その女はどこに行った?」

「気づいたらいなくなっていた」

 一恵は肩を抱く。

「わたし、知らない」

「でも、その人は言っていたのよ。知美を酷い目に合わせたら許さないってね。それでも無関係だと言えるの?」

 教室内が凍りつく。

「わたしは何も」

 弁解しようと歩みかけた知美の体を、一恵は手の甲ではたく。

「近寄らないで。良かった。あなたみたいな人と席が離れていて」

 彼女は冷たく言い払うと、自分の席に戻っていく。

「前、つめてよ」

 笠井が前の席に座っている女生徒を促し、席を詰めさせる。

 周辺の人達との距離が倍になる。そして、次の授業の開始時に高田は前田に席の移動を指示していた。