マリー

「俺の母親が言っていたんだ。こいつの母親のときも茶髪の女が目撃されていたんだって。関わった人が女に突き落とされたり、首を絞められたって」

「ほんとかよ」

「嘘つく理由なんてないよ。それに俺の伯母さんはこいつの母親に殺されたって聞いた」

 教室の各所から悲鳴が起こり、刺すような視線が教室中から知美に突き刺さる。


 否定しようとした言葉も、視線に飲み込まれる。

「まじかよ。俺、殺されるのか?」

「分からない」

 前田がちらりと知美を見た。

「悪いな。そんなつもりじゃなかったんだ。もう何も言わないから、勘弁してくれ」

 知美は否定しようとするが、唐突な話で何をどう言ってよいのかも分からない。

 感情の赴くまま、言葉を紡ごうとしたとき、低い声が静まり返った教室に響いた。

「今の話、本当なの?」

 声の主は一恵だ。彼女は一度教室を出たきり、戻ってきていなかった。心なしか朝よりも顔色が悪い。