マリー

「麻里?」

 やっと言葉を搾り出す。

 そのとき、岡崎とも違う大きな手が差し出される。そこに立っていたのは頭を丸めた目元のはっきりとした男性だった。彼は岡崎と同じ歳頃に見える。

「あの子が選んだ道だ。邪魔をしてやるな」

 知美はその言葉に頷いた。マリーにとって今の状態が良いわけがない。

「その人形を」

 知美はマリーを彼に手渡した。マリーを赤子のように抱かかえる。

「あなたは?」

「わたしの知り合いのお坊さんだよ」

 彼は杉田と名乗ると、知美の頭を撫でた。

「マリーはどうなったの?」

 彼は家の奥を見やると、小さく頷いた。

「少しだけ時間をもらえるかな。この人形はこちらで譲り受けます」

 知美は彼の洋服の裾をつかんでいた。

「わたしが、引き取りたい。できますか?」

「少し考えてみると良い。麻里じゃなくて、この人形を引き取ることを」

 彼の目には大地に根付く木のように、人の心を不思議と和ませる何かがあった。

 知美は今度は彼の顔を見て、うなずいていた。