マリー



 麻里は彼女を見て、寂しそうに笑った後、その場に倒れた。

 伊代は麻里の額に触れ、顔を引きつらせた。

「熱あるじゃない」

 彼女は麻里を抱き寄せると、辺りを見渡していた。

 目の前の雨が止み、辺りが晴れる。そこにいたのは麻里と、もう一人。

 知美は相手の顔を確認して、ドキッとする。その少女の顔は知美に良く似ていたのだ。

 彼女はソフトクリームを頬張り、笑みを浮かべる。

「美佐ちゃんは樋口さんと古賀さんと仲良いよね」

「まあ、話は良くするね」

「そうだよね」

 麻里は何かを言いかけ、口を噤む。

「友達になりたいの?」

「うんん。聞いただけだよ」

 麻里はそういうと、寂しそうに笑っていた。


 背後で微かな音がし、知美は我に返る。

 目の前には寂しそうに笑う麻里の姿があった。

 知美は今見た映像を思い出していた。あれは過去の麻里の記憶なのだろうか。

 知美の首に回されていた手の力が緩む。

 同時に背後で扉の開く音がした。

「川瀬さん?」

 岡崎が家の中に飛び込んできて、知美に駆け寄る。

 知美がもうろうとした頭で辺りを見渡すが、首を締め上げていた手はもうどこにもない。胸に抱いた人形を見るが、彼女が動くこともない。