マリー

 知美が家の中から出口を探そうと振り返ると、すぐ背後にマリーが立っていたのだ。

「どこに行くの? わたし達友達だよね?」

 全てを知る前なら、彼女を怖れ、冷たい言葉を発したかもしれない。

 だが、今の知美には彼女に対してそうした態度を取る事は出来ない。

 その時、風が起こり、手足に痛みが走る。皮膚が切れ、血がにじんでいた。


 その時、目の前に輝くような栗色の髪の毛をした少女が現れた。それは夢の中で見た少女だ。美佐と同じ年だった少女……。

 長い間、姿が変わらず、成仏も出来ず、どれだけ苦しんだのか、知美には思いを馳せる事しかできない。

 抑えていた感情が溢れだす。

「友達だよ。それなのに、酷い事を言ってごめん」

 マリーは冷めた目で知美を見つめていた。愛らしかった彼女を何がここまでそうさせたのか。彼女のためにももうその日々を終わらせたいと思っていた。

 強制でなく、彼女にも納得する形でここから去って欲しかったのだ。そのための方法を知美は一つだけ思いついた。

「わたしが死んだら、麻里は少しは楽になるの?」

「そんな気なんてないのに、嘘ばっかり」

「嘘じゃないよ」

 知美はマリーに手を伸ばすと、そっと抱きしめた。

 無機質で、人の体のように熱を帯びることもない。だが、病気がちだった彼女には、理想とも思える体だったのかもしれない。