マリー

 そう結論付けると、冷蔵庫の中に食べ物がないか探すことにした。

 彼女が帰ってくる前に食事を済ませておきたかったのだ。

 甲高い音が室内に響き渡り、知美は冷蔵庫に歩きかけた足を止めた。

 電話が鳴ったのだ。

 その足でリビングの奥にある電話まで行く。

「はい。川瀬です」

 電話口で息を呑む音が聞こえてきた。だが、すぐに猫なで声のような優しい声が響く。その声は今まで聞いたことない、少し年老いた男性のものだった。

「警察の者です」

 テレビの中で聞いたことがある台詞に、心拍数が早くなる。

 知美に迷う余地を与えないかのように言葉が続く。

「お家の人はいないのかな?」

「今、お母さんが出かけていて」

 ああ、とため息混じりの声が響く。

「お父さんは? それか近くに親戚の人はいないかい?」

 親戚の人と聞いて思い出すのが伯父さんのことだった。

 一度だけ会ったことのある、母親とは全く違うタイプの優しげな人だ。

「伯父さんがいると思いますけど」

「連絡先を教えてくれないかい?」