「明るくて、友達の多い子だったよ。学級委員をよくしていたし、一人でいる子を放っておけなくて、自分から話しかけるような子だった。小学生の時の話だけど、勉強も運動も得意で、音楽が好きな子だったよ」

 彼の言った美佐の姿は伊代が言っていた内容と重なり合う。

 その美佐を変えたのは何なのか、知美にはその答えが分からない。だが、その理由を目の前の岡崎に聞いてよいかは決めかねた。

 知美は短く息を吐くと天を仰いだ。

「ありがとうございます。次はわたしの番ですね。いつもお母さんはお仕事が大変そうで、疲れていて。仕事が大変なのにって言って怒鳴っていました。わたしのことを邪魔だとよく言っていました」

 その言葉に岡崎は目を見張る。

「どうかしましたか?」

 そんな彼の態度に違和感を覚え、尋ねる。彼は首を横に振るだけだった。

「いや、何もないよ。今は、白井さんの家ではどう?」

「伯父さんも伯母さんも良くしてくれます。でも、たまにわたしのことを悪く言う人がいるみたいで」

 知美にはそれ以上何も言えなかった。

 岡崎は知美の頭を撫でた。

「何かあったらわたしに言えばいい。力になるよ」

 知美はなにかみながらも笑みを浮かべていた。だが、知美には今まで自分の身に起こった事を言えない。

 だから、岡崎の優しさを今は受け止め、十分だと思う事にした。