マリー

「学校でいろいろ起こっているのよ。笠井君も、前田君も、加奈子もみんなあいつの被害者なのよ。わたしだって首を絞められた」

「誰がそんなことをするのよ。知美ちゃんがそんなことをするわけないでしょう」

「あの女が原因なの。子供がどうなってもいいの?」

「どうしてそんなことをする必要があるの? あの子はあの人達と会った事もなかったのよ」

 振り返った伊代と目が合う。彼女は申し訳なさそうに、目線を逸らす。

 優子は顔をあげるが、一度俯く。彼女は突然振り返ると、知美を指差した。

「こいつがわたしたちを恨んでいるからよ」

「恨むって、何かしたの? 知美ちゃんに」

 優子は応えずに、知美は悪魔だと繰り返す。

「優子、あなたは普段の自分の行動をどうにかしようと思わないの。あなたのその暴言でどれだけの人が傷つくか考えたことないの?」

「人殺しと一緒になんか暮らせない。このままじゃあたしが殺される」

 乾いた音が響く。

「いい加減にしなさい」

 頬を抑えた優子の切れ長の瞳に大粒の涙が溜まり、光を帯びる。彼女は唇を強くかむと、伊代を睨んでいた。