薄暗かった校舎の中から突然まばゆい夕日が見え、思わず眩しくて目を細めた。段々と光に慣れてそこに誰かが立っているのに気がついたものの、その姿に私は目を見開いた。


そこにいたのは、山伏のような服を着て、大きくて真っ黒な翼を背中からはやした男の人。髪は漆のように夕日に輝いて見え、その爪は鷹のように鋭く、暴れる妖怪の頭を鷲掴んでいる。


私はその光景が余りに信じられなくて、何もできずに只々その場に突っ立っていた。


彼が何かを呟いたかと思うと、いきなりパンッと大きな音がして妖怪の体が粉になって弾けとんだ。



「っ....!!」



思わず腰を抜かして私はその場にへたりと座り込んでしまい、掴んでいたドアノブから手が離れる。ドアがバタンと音を立てて閉まった。




「!!!!」



私がいることに気づいた彼は凄い速さでこっちを振り返って、ギロリと私を睨みつける。その目は真っ赤に輝いていた。



「...何してる。」


静かに低い声で尋ねる彼の肩は大きく上下に動き、まるで激しい戦闘をしたあとのよう。顔から汗が伝って滴り落ちた。


「.....っ、え、えっと....」



私がどうして良いのか分からずどもっていると、彼は天狗のような下駄をカランと鳴らしてこちらに向き直る。燃えるように赤い彼の目に威圧され、このままでは殺されると悟った私は、せめてもの抵抗でなにか言おうと口を開いた。しかしその瞬間、彼は操り人形の糸が切れてしまったかのように膝から崩れ落ちた。