下駄箱から靴を取り出し、履き替えようとしたところで

チリン

と音がした。


私は顔を上げて音のした方を向く。そこには二階へ続く階段があり、その少し上ったところに今日教室から見た猫又がいた座っていた。


不思議なことに、猫又のの尾がひらりと揺れると、また

チリン

と小さな鈴を転がしたような音がした。



何故だが分からないが、じっとこちらを見てその場を動こうとしない。暫く見つめあった状態でいると、しびれを切らしたかのように、タタタ...と軽やかに走ってきた。


私の足元まで来ると、にゃあ、と一声鳴いてまた階段まで戻って振り返るともう一度、にゃあと鳴いた。


「....ついてこいってことなのかな」


私が小声で呟くと、猫又はしっぽを鳴らして階段を上りだした。



「え、ま、待って」


私は慌てて靴を下駄箱に戻すと猫の後を追って階段を駆け上がった。





猫又は軽やかに階段を駆け上がり、踊り場につくと足を止めて私の方を振り返る。やっと追いつくとまた軽やかにのぼっていってしまう。



「はぁっ...はぁっ...」


い、いったいどこまで上がるの?


けして重いものが入っているわけじゃないけれど鞄はそれなりに重たい。それを持って一階から三階まで駆け上がった私は、50メートル走を全力で走った後のように息が切れていた。もう後に続くのは屋上への階段。それでも猫又は走っていってしまった。


屋上に連れて来たかったってこと?


私はもう一踏ん張りと思って重い脚を動かして後を追った。



屋上の扉の前に猫又はちょこんと座ってこちらを振り返る。



私は扉の前に立つと一度乱れた呼吸を落ち着けるために深く深呼吸して、ゆっくりとドアノブを回した。