漆黒の陰陽師~陰の王子と黄昏の姫~





なんでこんな所に野良犬が??
っていうか野良犬なんてテレビとかでしか見たこと無いのに.....




思わず私はそれを凝視してしまった。



中庭の真ん中にある大木の下にちょこんと座って、こちらを見上げているように見える。




犬って言うより....狼っぽいかな....?





私は少し教室を見回した。


窓の外を見ている人はいても、その狼に気づいているような人はいない。


もしかして皆には見えないのかな。


とすると、あの子は....妖怪??


私はまた視線を外に戻した。





「っ...!!?」






しかしそこには狼の姿がはなく、


代わりに一人の男の子立っていた。





その男の子は腕組みをしながら私達の教室の方をじっと見つめていた。



不意に男の子が私の方を向いて、目があってしまった。




え....




男の子は不敵にクスリと微笑い、パクパクと口を動かすと指をパチンと鳴らした。




「きゃぁぁっ!」

「うわぁっ!」





するときゅうに彼の足元から風が巻き起こり、その風は彼を包むように取り巻いて、やんだ時には男の子はもうそこにはいなかった。