ウトウト眠ってしまって。

…ガハッ!!

朝、慌てて目を覚ます。

静か過ぎて、寝過ごした。

いつも輝は7時頃にはゴソゴソ下で、物音を立てていて、私はそれで起きてたから。

時計を見て、ビックリして悲鳴を上げた。

「キャーーッ!!嘘だろぉぉ!!」

8時過ぎてるし…。

とりあえず動揺しながら営業所へと欠勤の連絡を入れた。

仮病ってやつ。

慌てて着替えて、慌てて部屋を飛び出す。

何やってんのよ、私は!!

どうして、こういう時に呑気に寝坊なんてしちゃうんだろう?!

電車に息を切らしながら、乗り込んで新幹線の出ている駅まで行く。

時間がどんどん過ぎて。

気が付けば、9時を過ぎていた。

人混みを掻き分けながら、輝の姿を必死で探した。

静岡行き9時52分発、こだま…。

どうしよう…見つからない。

時間はもう、9時30分になる。

『衝動的でもいい』

銭湯で出会った女性の言葉を思い出して、操られるように新幹線の切符を買う。

『衝動的な自分が本当の自分で、必ず彼もそれを受け止めて衝動的に返してくれる』

私はその言葉を、信じたい。

輝を信じる。

自分の信念を貫くように、輝を愛していく事を貫く!

私は改札を通り抜けて、輝を探す!

私は無意識にスマホを取り出して、親に電話を掛けた。

輝を探しながら、決めた事…。

「もしもし、お母さん?…私ね、結婚したい人が居るの…。その人と静岡に行くから…勝手だけど、ごめん…また、連絡する…」

自分の信念の決意を誰かに報告して、気持ちを固めたくて。

時間を確認しながら、ホームを走りながら探した。

輝の乗る新幹線がホームに入って来て、気持ちがいっそ焦る。

ここからは、もう一瞬の判断で決めていくしかない。

先に新幹線に乗って、中で探そう。

と、乗り込む瞬間キヨスクから輝が慌てて出て来た。

そして新幹線に乗り込んだのが見えたのだ。

輝っ!!

車掌が笛を鳴らして合図を送るから、私はダッシュで輝の乗り込んだ車内へと飛び込んで、

「輝っ!!」

扉が締まり、大声で輝の背中にしがみついた。

輝はビクッと背中を揺らした。

「輝っ…輝っ…やっぱり輝と別れたくないし…輝が大好きだよっ…輝っ…」

ゆっくり振り返って、驚いた表情をされた。

「としこ?!…」

すぐに私を抱き締めて、

「なんで?!なんで、居るんだよ?!」

「追い掛けて来たからに決まってんでしょ!…キヨスクなんかで、時間潰してんだもん…フェイント掛けるなんて…ひどいよぉ…」

輝は笑わないで、グチャグチャな私を真っ直ぐに見つめていた。