美紀は悩んでいた。

小さい頃から正樹が大好きだった。その気持ちは今でも変わらない。
でもどうして好きなのかが解らない。


ただ無性に甘えたくなる。
傍にいたくて仕方ない。
そして何時も言う。

「パパ大好き」
と――。


プロレスラーが好きと言う訳ではない。
どちらかと言うと嫌いだった。

珠希に連れられて、デパートの屋上に良く怪獣ショーを見に行った。

大喜びする兄達を横目に、珠希の後ろに隠れて泣いていた美紀。


プロレスラーの団体が来たこともあった。
その余りの大きさに号泣した。


でもパパは違っていた。
小さい時から馴れている訳ではない。
平成の小影虎とオーナーがリングネームを付けてくれたようにプロレスラーとしては小柄だった。
それでもパワーは人一倍だった。

その力を珠希が引き出してくれていたのだった。

優しい妻と可愛い子供達。
それが原動力だった。

正樹は優しかった。
だから美紀が大好きになったのだった。




 秀樹と直樹には、兄弟と言う以外格別な感情は持っていなかった。
勿論同級生の大にも。

美紀にとって三人は親友であり、仲間だった。
共に成長するための。


何故この三人ではいけないのか?
答えなど出る筈がない。
それでもあの想像によって美紀は、本当に正樹を愛している事を確認した。


祖父が書いた一言。


――美紀ちゃんの好きな人は誰?――

あれを見て正樹を思った。


正樹との結婚式を夢に見た。
周りで跪く三人組には目もくれないで正樹の元へ走った。


そしてやはりパパが好きだと実感する美紀だった。