それでも校長先生の勢いは止まらない。

更に知らしめたコーチの秘密を暴露しようとしていたのだった。


「何でも、前にいた高校では生徒に勝たせるための悪知恵を教えていたそうだよ。だから嫌気がさして辞めたらしいんだ」


『こんなの当たり前だ。みんな此処に勝つために来ているんだよ。ああやって、ピッチャーにプレッシャーを掛けるんだよ。もっと酷い手を使うチームもある。だからと言って、みんながみんな喜んでいる訳じゃないんだ』

直樹はコーチの言葉を思い出していた。


(――コーチ……
コーチもきっと悔しい思いをしたんだろうな)

コーチの助言のお陰で、秀樹はもう崩れることはなかった。

直樹は、コーチをこの高校に招いてくれた校長先生に感謝した。




 「彼も最近やっと解ったそうだよ。ヒデ君に言ったこと。ヒデ君を見ていて気付いたそうだ」


「えっ俺を見て?」
秀樹は首を傾げた。


「コーチは知らなくて言っていたのか?」


「んなわけねー」
直樹は笑った。


「そうだよ。コーチが知らない訳ない。だって気付いたご褒美に豪速球投げさせてくれたもんな」
懐かしいそうに秀樹は呟いた。




 「校長先生。一つ教えてください。コーチが言っていたライバルって、もしかしたら双子の兄弟の……」


「ああ、そうらしいね。永遠のライバルらしいよ」


秀樹と直樹は顔を合わせた。


(――確かにライバルだな。野球だけじゃなく、美紀のことも……

――だからコーチは俺に厳しかったんだ)

秀樹はコーチの指導の中に、本当は優しさがあったことを思い出して胸を熱くさせていた。