初めて出会った日から3年。
長いようで短い時を経て、今日、深結は大切な人たちと新しい生活を始める。

「ミュウちゃん、準備はできた?」
ノックと共に入ってきた舞姫に、深結は顔をあげる。
「舞姫さん、私は大丈夫です。愛歌さんは?」
不安げな深結に舞姫は苦笑してみせた。
「いま、こっちに向かってるわ。こんな日まで仕事しなくても良いのにね」
「愛歌さんらしけど、間に合うんですか?」
「大丈夫でしょ。それよりも、ミュウちゃん…愛歌はもちろん、彬のこともよろしくね」
「はい、分かってます」
ふんわりと微笑んだ深結に、舞姫も微笑み返す。
穏やかな空気が流れたとき、その空気を壊すように新たなノックが聞こえた。
「舞姫ちゃん、タカちゃんが呼んでるよ」
そう言って顔を見せたのは、愛歌の弟で深結の夫になる敦尉だった。
「ありがと、あっちゃん。じゃ、ミュウちゃん後でね」
二人を残し、舞姫は部屋を出ていった。
残された二人は照れたように顔を見合わせる。
「ミュウちゃん」
「はい」
「後悔してない?」
「はい。してません。この先も後悔するつもりはありません」
「そっか…俺も彬も姉貴も同じだよ。ミュウちゃん、皆で幸せになろうね」