今昔狐物語


「嵐華様…!」

直球すぎる物言いに阿多羅は顔を朱に染めた。

そんな彼を見て嵐華はさらに言い募る。


「我は…我はそなたが好きじゃ!!何故わからぬ!?拒絶する!?そなたとの子が欲しいと切望し、何百年己を殺したと思うておる!?」

言うなり、嵐華は自分の帯を解き始めた。

主人と従者だけの空間に、帯の擦れる音がやけに大きく響く。

「我を焦らした報いじゃ!今宵は逃がさぬゆえ、覚悟しいや!」

金色の瞳が妖しく揺らめく。



(捕われたい…)


阿多羅は瞳から視線をそらせなかった。



(その瞳に、捕われてしまいたい)


何も考えず、心奪われた彼女の瞳に全てを捧げてしまえたら…。


首筋に甘く口づけられ、阿多羅は覚悟を決めた。