今昔狐物語


「関係ない。獣との交わりが嫌なら人間に化けたまま抱いてやろう。それで問題ないな?」

ちよが有無を言うより早く、飛牙は彼女の唇を奪った。

ちよの熱く、甘い口内を舌で犯しながら、彼女の着物の帯に手をかける。


「いやぁあ!!」

窮地に陥ったちよは力任せに飛牙を押しのけた。


「私は好きでもない相手とこんなことしたくない!」


すると、獣は言った。


「俺は愛しいよ」


耳にとても心地好い、甘き声音。


「俺はお前を愛しく思う」

「嘘よ…。あなたは私の名前すら、聞こうとしないじゃない…」

ちよのその言葉には、まるで知ってほしいような響きを含んでいた。


「お前の名なら知っている」

「え…?」

「ちよ、だろう?」


思わぬことに目を見開く。

「なん、で…」