今昔狐物語


「ゆき!!」

遊真が野盗達の前へ出た。

「なんだてめぇ!」

「野郎に用はねぇ!殺っちまえ!」

血の染みを纏った刀の切っ先が遊真に向けられる。

「やめてぇ!!遊真ぁ!!」

「姉ちゃんはこっちだ。来な!」

連れて行かれるゆきを見て、普段冷静な遊真の瞳に激しい怒りが現れた。

「ゆきに触るな!!!」

「ぐわぁっ!!」

行く手を阻む人間を一人、二人と容赦なく殴り倒していく。

男達が刀で多少の傷を負わせても、遊真の勢いを止められはしなかった。

しかし――。


「へへっ、隙あり!」


肉に刃が突き立つ嫌な音がした。

「う…ぁ…!」


斜め後ろから脇腹を一突き。


「遊、真…?」


一部始終を目にしていたゆきは、遊真の身体が地に崩れ落ちる様を呆然と見つめた。