今昔狐物語


母親の喜びの声に父親がブッと朝食の飯を吹き出した。

「ゲホ、ゴホ…お、おめでたぁあ!?」

「本当か、ゆき!」

遊真がゆきに近寄り不安げに腹を見る。

「毎夜毎夜、遊真さんが頑張ってくれてたからねぇ。そろそろ孫の顔が見れる頃だと思ってたのよ」

母親に恥ずかしげもなくそんなことを言われ、ゆきはもちろん、さすがに遊真も頬を赤らめた。

しかし、遊真に関してはそれも一瞬のこと。

再び不安な表情で自分を見つめる夫に、ゆきは疑問を抱いた。

「遊真?どうしたの?」

「え?」

「なんだか、悲しそう」

「…っ!?」


見透かされた。

そう感じた遊真は無理矢理に微笑む。


「…悲しくなどない。嬉しいよ、ゆき」