今昔狐物語


「なんか、遊真に言われると本当のように思えるから不思議ね。もしや、遊真がお狐様だったりして」

「ふっ、馬鹿なことを」

冗談まじりで言ったら鼻で笑われた。

「さ、直に日が暮れる。そろそろ村へ帰ろう。隣村が野盗に襲われたらしいからな。ここも油断できない」

「うん」


箒を持った遊真がゆきの少し前を歩き出す。

(でも、もし遊真を狐にたとえるとしたら白狐よね。遊真の髪は白いし)

夕日にきらきらと光る遊真の白い髪。


(遊真にも会わせてあげたいな。あの綺麗なお狐様)

この時、ゆきはふとある事に気づいた。


(あれ?そういえば、遊真と出会ってからかしら?お狐様がいなくなったの)


遊真と出会ったのは数年前。

お狐様がいなくなったのも数年前。

(偶然…?でも…確か、この前)


――感謝する。ゆきの握り飯は旨いから好きだ


(遊真と出会ってからは不作続きで、まだ一度もお米の握り飯はつくっていない)


なのに、彼はさも食べたことがあるように感想を述べた。