今昔狐物語



「ゆき…」

彼女の母親の言った通り、社で掃除をしていたゆき。

社の周りは箒で綺麗に掃かれていた。

今、彼女はぼろきれで小さな社をせっせと拭いている。

「あ、遊真!来てくれたのね」

夫に気づいたゆきが彼に笑顔を向けた。

「ああ。掃除、ご苦労様」

「ふふっ、あまりにも汚いからやり甲斐があるわ」

一生懸命掃除をするゆき。


(わからない…)


遊真は常々引っ掛かっていたことを口にした。

「……ゆき、君はなぜこの社を綺麗にするんだ?」

「え?なぜって…なんでかしら?あまり深く考えたことはないけれど…」

「信仰のない者はここには来ない。来ても掃除までしない。なぜゆきは放っておかない?」