今昔狐物語



 大雨から数日後、穏やかな天気を取り戻した空を見上げつつ、遊真は農具を片付け家の中へ入った。

今日も何事もない一日が終わる。


「ただいま。ゆき…?」

いるはずのゆきの姿が見当たらない。

「すみません、ゆきはどこに?」

台所にいたゆきの母親に尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「ああ、あの子なら社よ。この前の雨で汚れただろうから、掃除してくるって。まだ帰ってないの?」

「はい。迎えに行ってきます」

「ありがとうね。近頃は物騒だから…隣村は野盗の被害にあったっていうし…。何かあったらあの子をよろしくね、遊真さん」


遊真は人の良い笑みを浮かべると、大事な妻を探しに祠の方へと歩いていった。