遊真は社の前にずぶ濡れで立っていた。
「遊真!?」
「あ…ゆき…」
「大丈夫!?寒くない!?」
慌てて駆け寄り、傘に入れてやる。
けれど遊真はゆきの問いには答えず、雨に打たれ続けて濡れた美しい顔に無邪気な笑みを浮かべながらこう言った。
「ゆき、見て。無くなってるよ。ゆきの握り飯」
「え?」
確かに、供えた握り飯が綺麗に無くなっている。
しかし――。
「ほら、俺の言った通りだろう?明日までには無くなっていると――」
唐突にパンッと頬を打つ小気味よい音がした。
「ゆき…?」
叩かれたことに訳がわからず目を見開く遊真。
「握り飯なんてどうでもいいわ!遊真の方が大事なの。お願い、こんな雨の中、無茶しないで…。病気になったらどうするの」



