今昔狐物語


「神様、か…」

何やら感慨深げに繰り返す遊真。

「遊真…?」

「いや…案ずるな。明日までに握り飯は無くなっているだろう。だから、そう不安げな顔をするな」

優しく頭を撫でられてゆきは微笑んだ。

「ありがとう。遊真は優しいわね」

優しい。

いつだって遊真はゆきの心に安らぎをくれる。

「そろそろ帰りましょう?お父さん達が起きてくる頃よ」

先程よりも明るくなった空を見上げてゆきが言った。


「そうだ。今度お父さんに内緒で遊真にも握り飯つくってあげる!」

不作続きなため米を握ったら叱られるが、夫にも食べさせてあげたい。

「感謝する。ゆきの握り飯は旨いから好きだ」

「ふふっ、ありがとう」


他愛もない話をしながら帰路につく。


しかし、ふとゆきは気づいた。


(あれ?そういえば私、遊真に握り飯つくってあげたことあったかしら?)