村の外れには小さな祠(ホコラ)があり、小さいながらもまだ村人達の信仰を集めている。
年よりの話によると昔は立派な社が建っていたそうだが、年月が経つうちに薄れゆく人々の信仰と共に社もその景観を変えてしまっているようだ。
「今日も少し炊いてお供えしてきたの」
この言葉に遊真が無言でピクリと反応する。
「まあ…お社には、なあ。少しなら構わんよ」
「ありがとう、お父さん」
「少しだぞ」
念を押す父親に苦笑しつつ、夫の隣でゆきも夕飯を食べ始めた。
食事と後片付けが終わった後、ゆきの両親は隣の寝室へと早々に移動した。
いつもこうだ。
なぜなら、遊真とゆきが新婚夫婦だから。
新婚の二人は両親とは別に、いろり端で眠る。
新婚ゆえに、色々と夜の営みがあるだろうと、両親は気をつかって退散してくれるのだ。
そういうわけで、今は遊真とゆきの二人きり。
若夫婦はいろりの火を見つめながら今日一日の出来事を語り合っていた。



