今昔狐物語


「今日も疲れたでしょう?さ、座って」

ゆきは抱き着いたままの遊真をいろり端へ座らせた。

父親と遊真は一日野良仕事に従事している。

疲れて帰ってくる二人に食事と安らぎを与えるのは女達の務めだ。

ゆきは母親と共に用意した夕飯を運んだ。


二人の前に粟飯(アワメシ)の入ったお椀が置かれる。

質素な食事。

粟と少量の米が混ざった飯を食べながら、父親は厳しい表情をした。


「今年も不作だ。当分、米は食えんぞ」

「そうですか…。今年もねぇ…」

母親が粟飯を見つめて溜息を吐いた。


「でもお父さん、社にはお米を持っていっても良いでしょう?」

ゆきが自分のお椀を用意しながら言った。