今昔狐物語


「えっ…と…」

ちよがどう説明したものか悩んでいると、村人の前に飛牙がずいと進み出た。

「俺はこの地に流れついたモノ。ちよの父上よ。お前の娘を嫁にもらいたいのだが、よいか?」

「ひ、飛牙…!?」

至極真面目に尋ねる飛牙に、ちよは赤面した。


「嫁!?確かに娘も年頃だが…見ず知らずのあんたにはなぁ…」

渋る父親に飛牙は覚悟を決めた。


「ちよを嫁にくれるなら、俺はもう人喰いをやめよう」


この言葉に男達はざわめいた。

「人喰い!?」

「まさか、こいつが事件の犯人か!?」


何も感情を見出だせない表情で獣は答えた。


「……そうだ。俺が喰った」