今昔狐物語


恥ずかしそうにしていた飛牙だったが、観念したのか大人しく撫でられる側に徹した。


「これ程優しく、誰かに頭を撫でてもらったのは…生まれて初めてだ」


ポツリと呟かれた、心の声。


「ちよの手は良いな。落ち着く…」


いつしか飛牙は目を閉じていた。

安らかな表情でちよの手の温もりを受け入れている。


そんな彼をちよは切なげに見つめた。


(飛牙が人間を食べずに済むなら…彼の心が救われるなら…一緒に、いてあげたい)


心を打ち明けてくれたことが嬉しかった。

だからこそ、自分も彼に応えたい。


(けど…飛牙がお兄ちゃんを…村の人達を食べた事実は、消えない)