今昔狐物語


「そんなに見ないで…」

「ああ、すまない。気に障ったか」


視線をそらしながら、少しだけ離れてくれた。

それでも隣という距離だ。


「どうだ?旨いか?」

旨いと言われることを期待するように見てくるが、正直なところ、味付けなどしていないため旨いとは言えない。

「うーん…味はよくわからないけど、焼き加減は丁度いいと思う」

味に関しては曖昧に返事をし、代わりにちよは違うところを褒めておいた。

すると――。


「旨くは、ないのか…」


落胆したような声が隣から聞こえた。

意外に思い横を見ると、「あの」飛牙がションボリとしている。

常に堂々としていて不遜と言ってもいい態度を示す飛牙が。


不意打ちだった。


(な、なんか…可愛い)