今昔狐物語


「俺に惚れたか?」

「なっ!?」

一気にちよの頬が熱くなった。

「ほ、惚れてない!」

「どうだか?」

「惚れてないもん!」

「くく…まあ、良い。足に傷がないとわかっただけで良しとしよう」


それから飛牙は持っていた枝を差し出した。

「ほら、食え」

そこには程よく焼けた魚が三匹刺さっていた。

「安心しろ。腸(ハラワタ)はとった」

「驚いた…。飛牙って料理できるのね」

「料理というか、狐火で焼いただけだが…」


ちよは枝を受け取ると、近くにあった木の根元に座り込んだ。

実はかなりお腹が減っていたちよ。

先程の子狸は生きていたから逃がしたが、すでに料理された魚を食べない程愚かではない。


「じゃあ…いただきます」

控えめに魚にかぶりつこうとした時だった。


「あの…飛牙?」

「何だ?」


物凄い至近距離でかぶりくちよを観察している飛牙。


視線が気になって食べづらい。