今昔狐物語


「君に嫌われるのが怖くて…なかなか言い出せなかったんだ」

「でも、風真くんは私が隠し事苦手だって知ってた…。それなのに…黙ってたんだ…」


狐だったことがショックなんじゃない。

心から信じてたものが崩れ落ちて、足元にぽっかり穴が開いた感覚だ。

あかりは引き返そうと座敷に背を向けた。

「ごめんなさい……私…帰ります」

「あかり…!?待って!話を聞いて――」

引き留めようと伸ばした風真の手はパシッと払われた。


「火叉七さんは…」


彼女は言う。


「火叉七さんは、初対面の私にちゃんと正体を教えてくれた。風真くんも…そうだったら良かったのに」


自分の理想を押し付けても仕方ない。

わかっているからこそ、あかりは罪悪感からこう言った。


「ごめんなさい…」