なぜこの日、焼肉屋にお狐様が勢揃いしたかというと、この氷雨の兄が人間の花嫁を連れて来ると全員に連絡したからだ。
相手はどんな女性なのだろうと父親の玖羅加は先程から内心ハラハラしっぱなしである。
どうやら彼女に自分達が狐だという事実は内緒なようで、知ったらどんな反応を示されるのか色々考えては不安になるばかり。
「玖羅加、少しは落ち着け」
「そうは言っても父上…」
「案ずるな。息子を信じろ」
飛牙はニヤリと笑う。
「なんたってあやつは俺以上に腹黒いからな」
とその時、女性の手を引いてこちらに近づいてくる孫を飛牙は視界に捉えた。
「おお、やっと主役のお出ましか。待ちくたびれたぞ、風真」
火叉七はさして興味もなさ気に風真の方を見た瞬間、息が止まりそうになった。



