気になる彼女のことを思い出して、再び悩ましい溜息。
あかりが彼氏持ちなことは承知しているが、未練がましくプレゼントなどあげてしまった。
あれから彼女のことを忘れるためにも別の街で花嫁探しと称するナンパを頑張っている火叉七だが…。
「ダメだぁー!忘れらんないっての!」
「火叉七ってばうるさーい!ほら、このお肉焼けたわよ」
「ん、ありがと姉上」
ちゃっかり可愛から焼けた牛肉をもらう。
狐さんなのでお肉は大好物だ。
「鼠の肉はないのか?」
気怠げに髪をかき上げながら飛牙が呟く。
「父上、ここは人間の店だよ。鼠なんか出さないって」
喋りながら玖羅加が程よく焼けた牛肉を父親に取り分けてやっていると――。
「すみません。遅れてしまいましたか?」
遊真の首根っこを引っ張って座敷へやって来る水真馳の姿が皆の視界に入った。



