今昔狐物語



 桜に散りばめられたキラキラと光るラメ。

自宅のアパートにて、あかりは火叉七のことを思い出しながら髪飾りを見つめていた。

「また会えるなんて思わなかったな…」

嬉しかった。

髪飾りを貰ったことではなく、彼が自分のことを探してくれていたことが。

「お礼なんて…よかったのに…」

おごってあげたハンバーガーより、この髪飾り一つの方が高そうだ。

「火叉七さんて…狐なんだよね…?」

信じ難いことだが、彼が嘘をつく理由もないだろう。

「不思議な人…」

また会えるだろうか。


「会いたいなぁ…」


小さく願いを呟いた、その時。



――ピンポーン



チャイムが鳴った。

夜、こんな時間にやって来る客と言ったら決まっている。

「風真くん?」

玄関のドアスコープから確認し、彼を迎え入れる。