「これ…」
ズイと渡されたものは桜の花が綺麗な髪飾り。
「この前の礼だ。おごってもらったから」
「そんなっ、あれは…!」
「いいからいいから。貰ってくれないかな?その方が俺としては嬉しい」
火叉七は人懐っこい表情で笑った。
「あんたの喜ぶ顔が見たかったんだからさ」
トクン――とあかりの心が跳ねる。
照れ臭げに口元を緩めると、彼女はキュッと髪飾りを握り締めた。
「ありがとうございますっ。大切にしますね」
「うん!やっぱりあかりは笑ってた方が可愛いな」
ストレートな褒め言葉にあかりの顔が耳まで真っ赤に染まる。
それに気づいているのかいないのか、火叉七は店内にある時計を見上げてこう言った。
「おっと、こうしちゃいられないぜ!俺も婚活頑張んなきゃ。じゃあな」
「あっ…!」
疾風の如く現れ、去っていく。
また口説かれるのかと思ったが、そうじゃなかった。
「火叉七さん…」
意外とあっさりしているが、そんなところに好感を持ったあかりは知らず火叉七に惹かれていた。



