(この綺麗な笑顔の下で、何を考えてるんだろう…?)
わからない。
怖くなって一歩下がろうとした時、彼がスッと笑みを消した。
「……ねえ、あかり。どうしてかな」
グイと腕を引き寄せられ、抱きしめられる。
「ちょ…!こんなところで…!」
駅前なのだから人が多い。
周囲からジロジロ見られているだろうと顔を真っ赤にさせるあかり。
そんな彼女に風真は冷たく囁いた。
「君から雄の臭いがする…」
「っ…!?」
「もしかして…誰かと会っていた?」
静かに息を呑む音は彼に聞こえてしまっただろうか。
「あかり、答えて。男といたの?」
探るような鋭い声。
心臓がバクバク鳴り、正直に教えてしまいそうになったあかりだが。
――風真くんだって、私に嘘ついた
ならば。
「……一人でいたよ」
初めて、嘘をついた。
「そう…。あかりがそう言うなら、本当に一人だったんだね」
納得したセリフの割には彼の声は冷たいまま。
「今日、僕の部屋においで」
彼に抱きしめられる身体がミシリと軋んだような気がした。



