今昔狐物語


「わからない?なんで?自分の彼氏でしょ?」

「その……え…と…」

困ったように俯き、視線をさ迷わせるあかり。

これを見た火叉七は何かを察したのか、慌てて優しく言った。


「ご、ごめん!嫌な質問だった…?聞かなかったことにしていいから…!」


「いえ、そんな、ことは……」


声が震えた。

あかりは自分が思った以上に動揺していることに気づく。


彼氏の浮気。

本人に追及する勇気もなく、かといって相談する親友もなく、窒息にも似た苦しさが纏わり付いて。


いい加減、呼吸がしたかった。


「私の……彼が…その……浮気、してるみたいで」

「え…」


「私…嘘つかれるのが、苦手で……彼のこと、わからなくなっちゃって…」

中学の頃、あかりはすごく仲良しだった親友にイジメられた経験がある。

それ以来、軽く人間不信になり親しい相手にも心を許さないようになった。

人は上辺を仮面で飾る。

それを剥ぎ取ればどんな本音が飛び出すかわかったもんじゃない。

まさか「ずっと親友だよ」と言われた相手から「あんたいっつもあたしのこと睨んでたでしょ。ムカついてたんだよね」と言われるなんて予想できるはずもない。