今昔狐物語


残念だと言いたげに微笑む火叉七。

なぜかその潤んだ瞳があかりの胸をチクリと痛ませた。


「ねえ、聞いてもいい?あんたの彼氏ってどんな奴?」

「え……」

「モテ野郎になりたいから参考にしたいんだ。何がよくて付き合ってるの?」


「私の彼は……」


あかりが彼氏のことを考えて真っ先に浮かんだのは、悲しいかな、浮気現場だった。

つい最近、偶然見てしまったのだ。

男友達と遊びに行くと言っていた日に、他の女と街を歩いていた彼のことを。


何が良かったのだろう。


(彼の正直なところが…好きだった)


火叉七ほど直球ではないが、あかりに隠し事なんてしなかったし嘘は一切つかなかった。

それなのに――。


「私ね…彼のことが…ちょっと……わからなくて」