「あの…お狐様が、どうしてこんな街中にいるんですか?」
「火叉七って呼んで。あんたの名前は?」
「あかりです」
素直に教えたら火叉七はほんのり頬を染めた。
「あかりか…。名前まで超好み」
「え?」
「俺、あんたに惚れたみたい。ねえ、俺の花嫁になってくれないかな?」
「………え?」
今度こそ本当に呆気に取られたあかり。
開いた口が塞がらない。
「俺さ、街には花嫁探しに来てるんだ。三十年も婚活中なんだけど、なっかなか“この子だ!”って思う子がいなくてさ…。そろそろ人間不信になりそうで怖いぜ」
ポテトをかじりながらムスッとする火叉七。
ど直球な彼のことだ。
今の話が本当ならば、こんな風に正体を明かして人間の女性達に馬鹿にされたか引かれたかしたに違いない。
あかりは少し同情した。
火叉七の素直さは美徳だと思うから余計に心が苦しくなる。



