今昔狐物語


「え…三十年って……歳いくつなんですか?」

どう見たって二十代。

それなのに彼はしれっとこんな発言をする。

「歳は~……うーん…いくつだったかな?もう二百は生きたっけ?」

「二百!?」

「俺、人間じゃないからさ。狐なんだよ」

サラリと言われ、あかりは一瞬フリーズした。

「あ、そんじょそこらの野狐と一緒にするなよ?俺は霊力あるお狐様だぜ」

キラキラスマイルで「スゴイだろ!」と語る彼だが、あかりからしたら壮大な嘘にしか聞こえない。


「冗談…ですよね?」


「んなわけあるか!俺は嘘はつかない。絶対に」


真面目な顔で断言する。

その目力にあかりは彼の強さを感じた。


(嘘を言ってる目じゃ…ない)


嘘つきや挙動不審には敏感なのだが、その敏感な直感が信じてみろと言っている。

あかりは信じる方向で話を進めてみた。