今昔狐物語





「肉だ!」

目をキラキラさせてうまうまとハンバーガーにかぶりつく火叉七は子供っぽく見えて可愛い。

あかりは微笑ましい光景にまたクスリと笑う。


(大学生かな?スーツ着てないし)


大学生ならば同い年くらいだ。

あかりは目の前に座る彼を観察した。

首もとまである少し長めの茶髪にクリクリした目。

整った顔立ちは甘く、イケメンさんだなとしみじみ思う。


(スゴイ勢いで食べてるけど……よっぽどお腹空いてたのかな?)


ハンバーガーがもう終わりかけている。

ポテトも買ったが、これだけでは足りなそうだ。

「あの…私の分も食べますか?」

まだ手をつけていない自分のハンバーガーを差し出す。

「は?それはあんたの分だろ?俺はいいから、あんたが食べなって」

裏表のない性格を表す邪気のない笑みがあかりに向けられた。

そして彼は言う。

「あんた、いい人間だな。俺、山から下りてかれこれ三十年経つけど…あんたみたいな優しい人間、初めてだ」