少し心を落ち着けてから火叉七は女性の顔を見た。

気弱そうな、おっとりしていそうな雰囲気の彼女は黒髪ストレートがよく似合う地味系女子だ。

地味だが、火叉七は好みだったらしい。

改まってコホンと咳ばらいをするとお狐様は照れながら確認した。

「本当に大事ないか?足捻ったりとかは?」

「大丈夫です。迷惑おかけしてすみませんでした」

ペこりと頭を下げる彼女につられ、なぜか火叉七まで一緒にお辞儀する。

と、その時。



――ギュルルルル~



盛大に火叉七の腹が鳴った。

周りがザワザワしているにもかかわらず、彼のそれは耳にハッキリと聞こえたのだから凄まじい。

よっぽどお腹が減っているのだろうか。

女性は驚きながら自分より背の高い火叉七を見上げた。

彼はというと「しまった!」という表情で顔を真っ赤にさせている。


「あの…良かったら、お昼一緒に食べませんか?私、おごりますから」

「えっ、いいの…?」

「はい。今の…お礼がしたいんで…」

ハニカみ笑顔を向けてくる優しい彼女に嬉しくなり、耳と尻尾が飛び出そうになった火叉七。

あたふたと手で頭を押さえる。

そんな自分を見てクスリと笑う彼女が可愛いな、なんて密かに思いながら火叉七は近くのハンバーガーショップへと歩き出す彼女の後を追った。