「絵師、様…?嘘でしょ?嫌よ…!ねえっ!起きて絵師様ぁ!!」

肩を揺さ振るも、甲斐無し。

青年の身体は重力に逆らうことなく、可愛の身体にのしかかる。


「い…や……」


震える手で抱き留めて、可愛は泣いた。


「いやぁああ!!私っ、まだあなたの名前聞いてない!!絵師様!お願い目を開けて!絵師様ぁああああっ!!!!!」


顔を上げれば夜空には月。

彼が最期に綺麗だと言った、月。


それを見上げて可愛は泣いた。


いつまでも。


いつまでも――。