「人間は作物が不作になると狩りを始める。俺はその時、人間に狩られそうになったのだ」
神聖なる黒狐だとも知らずに血走った眼で獲物を追い詰める人間達。
「俺は逃げた。社を捨て、その土地の人間を見捨て、俺は山を一つ越えた」
山を越えた先には、飛牙の両親が祀られている大きな社がある。
白狐と黒狐の雌雄が祀られる社。
自分よりも霊力の強い親狐が住まう土地だ。
そこならきっと大丈夫だろうと思っていた。
しかし――。
「知らせが来た。弟の遊真(アスマ)からだった」
両親と暮らしていた弟、白狐の遊真が血相を変えて飛牙のもとへ飛んできたのだ。
弟は言った。
――父上と母上が、人間に喰われた。



