その日は夜空の月が綺麗で、可愛はいつもよりも長くそこにいた。
「満月だね…絵師様」
どこかで同じ月を見ているかもしれない彼に、そっと囁きかける。
隣にいない青年を思いながら今宵はここで眠るのもいいかもしれない。
そう可愛が考えていた時だった。
カラン…
不意に下駄の音が聞こえた。
「っ!?」
ピクリと反応する可愛。
素早く辺りを見回すと、薄闇の向こうからこちらに近づいて来る人影を発見した。
ヨロヨロと歩く姿は以前に比べ随分と頼りなげだが、可愛には誰だかすぐわかった。
「絵師様っ!!」
嬉しさに駆け出す。
「やあ…久しぶ、ゲホゴホッ!」
「絵師様!?」
青年が血を吐いた。
彼の手に鮮血が付着する。
「血が…!絵師様どうしたの!?」



