今昔狐物語





「ちょっと姉上、気持ち悪いってば!」

初デートを終え屋敷に戻ってきた姉がニヤケまくっていて気持ち悪い。

弟の火叉七は距離を取って姉の顔をジロジロとうかがった。

「そんなに…良かったのか?」

「うん!楽しかったの」

「へぇー…」

人間と居るのは楽しいらしい。

俺も人間と仲良くしに山を下りてみようかと、ちょっぴり興味を抱いた火叉七だった。

「また明日も会いに行くわ」

「ふーん。まあ好きにすれば。でもさ、ほどほどにしときなよ?父上に怒られるぞー」

「大丈夫だもん!」


ルンルンと、鼻唄でも歌い出しそうな可愛に火叉七はやれやれと溜息をつく。

口には出さないが、姉が幸せそうならそれで良いか、と心中密かに思ったのだった。