サラリとデートに誘ったつもりだったのだが、青年の気持ちはお狐様には通じなかった。
「ぎんぶら?何それ?美味しいの?」
「ぶっ」
また吹き出して大爆笑。
「くくっ…あははっ!」
「ひ、酷い!また笑ったわね!!」
これには可愛も真っ赤になる。
「だって、美味しいの?って…はは!」
自分がとんちんかんな発言をしてしまったのだと感づいた可愛は悔しくて「ぎんぶら」とは何か問い詰めた。
「銀座の街をぶらぶら歩くことだよ。流行り言葉なんだけど、知らなかったかい?」
「知らないわ!」
顔を赤らめたまま不貞腐れた様子で腕を組み、プイッと横を向いてしまう可愛。
ご機嫌斜めになってしまった少女を愛らしく思いながら青年はご機嫌取りを始める。
「君の言う通り、美味しいものでも食べに行こうか。どう?付き合ってくれない?」
「………いいわ」
美味しいものに釣られたわけじゃない。
可愛だって青年に興味があるのだ。
「なら今日と同じ時刻にここで待ち合わせ。いいね?」
「うん!」
何だかんだと、可愛は彼を気に入っている。
お誘いが嬉しくてお狐様の心は弾んだ。



