虚をつかれたのか、青年はハッと目を見開いた。
すぐにその顔はくしゃりと歪む。
傷ついたような、今にも泣き出しそうな瞳に反して彼の唇は綺麗な弧を描いた。
「そうだね……」
ひらり、可愛の髪に落ちてきた桜の花弁を見つけ、青年が立ち上がる。
優しい手つきでそれを取ってやりながら彼は囁いた。
「ありがとう、お嬢さん」
「ふふ、どう致しまして。頑張る気になったかしら?」
「そうだね…。お嬢さんのことをもっと知りたくなった、かな」
爽やかな笑みを向けられ、可愛の頬がポッと紅潮する。
「だ、ダメじゃない!私のことよりも絵を…!」
「ねえ、お嬢さん。明日は暇かい?」
唐突に話題を変えられた。
話を聞かない青年に文句を言ってやりたいところだが可愛はグッと堪える。
明日について問われ、何事かと興味を持ったからだ。
「明日?特に予定はないけれど」
「なら、俺と銀ぶらしませんか?」



