それから絵を描き終えた時、青年は急に咳をした。
「どうしたの?大丈夫?」
「ゴホッ…ああ…ちょっと風邪気味でね。それより、はい。できたよ」
渡された紙には可愛にそっくりなおかっぱ髪の少女が描かれており、その少女は桜を見上げて微笑んでいる。
「わあ!凄い!あなた、絵上手なのね!」
「気に入った?」
「ええ!」
「ならあげるよ」
「いいの!?やった!!」
立ち上がってぴょんぴょん飛び跳ねる可愛。
この喜びように青年は少々面食らった。
「えと…そんなに、嬉しいかい?」
「もちろん!見直したわ。これからあなたのこと絵師様って呼ぶわね」
無邪気な可愛の言葉に青年の表情が曇る。
「絵師だなんて……俺はしがない学生だよ」
「学生さんなの?」
「将来絵師になりたい夢多き学生、かな。まあ…夢が叶うことはないだろうけどね…」
いつでも前向きな可愛はこの後ろ向き発言にムッとした。
他人事と割り切ればいいものを、それができない性分の彼女はビシッと叱る。
「ダメよ!諦めたらそこで終わりなんだから!あなたなら絶対なれる。こんなに上手なんだもの。もっと自信を持ちなさい!」



