優雅に飛ぶ白い蝶に触れようと可愛は手を伸ばす。
そのまま立ち上がってしまった少女に青年は穏やかな声で注意した。
「こら、動かないで」
「あ、ごめんなさい!蝶々を見るとつい追いかけたくなっちゃうの」
「へぇ、蝶が好きなのかい?」
「ええ。大好きよ!美しいし、かわいいの」
無邪気に微笑む可愛は眩しい。
青年は一瞬、切なげに目を細めてからフッと肩の力を抜いた。
「確かに蝶はとても魅力があるけれど、今は俺に集中してね」
スッと手を差し伸べて可愛を引っ張り、また隣に座らせる。
「うう…あのね。あなた、ちょっと私のこと見すぎだと思うの」
「ふふっ、何それ。お嬢さんが自分から題材になるって言ったんだよ?俺に見つめられるのは当然さ」
楽しそうに口角を上げ、青年は再び筆を持つ。
「さ、続きだ」



